1.タレントにパブリシティー権(東京高裁2006/4/26)
自然人は,憲法13条に基づく人格権により、正当な理由なくその氏名・肖像を第三者に使用されない権利をもっています。
これを一般的には肖像権といいます。
この点、いわゆる有名人としてタレントや著名人も,同様の肖像権を持ちますが、タレントなどの場合はさらにそれを商品の宣伝・広告に使用したり,商品そのものに付したりすることによって,当該商品の宣伝・販売促進の効果を上げることができます。
このような著名人の氏名,肖像は,当該著名人を象徴する個人識別情報として,それ自体が顧客吸引力を備える経済的利益ないし価値を持っています。
そこで、著名人のこの権利を一般に「パブリシティ権」と呼びます。
その保護範囲は、通常人より広い範囲で保護されることになります。
法律的には著名人の写真を利用する場合には、写真の著作権者のみならず、写真の被写体である有名人の承諾が必要ですね。
今回、東京高裁は、判決文の中でタレントにパブリシティー権があり、出版社に賠償を命じました。
「投稿写真誌に私生活の写真などを無断掲載されたとして、優香さんら女性タレント15人が発売元の出版社、コアマガジン(東京)と編集者らに損害賠償を求めた」
「一審はプライバシー侵害の請求だけを認めていた。」
「著名な芸能人の肖像などの無断利用は、本人の社会的評価を損なわせ、ファンなどが離れ、イメージが悪化するなど弊害を招きかねない」としたうえで、「法律にはパブリシティー権の明文規定はないが、プライバシー権とは別個に法的保護を受けられる」と指摘した。」
(日経2006/4/27)
判例上は、タレントのパブリシティ権を間接的に承認したものは地裁レベルでありますが、今回の東京高裁の判例は、高裁レベルでは初めてのもののようです。
もっとも、競走馬のパブリシティ権を論じた最高裁の判例はすでに何度も紹介していますが、今回のように人であるタレントの権利を論じたものはなかったでしょう。
【最新判例紹介 2020/02/02】
2.「ピンク・レディ事件」平成24年(2012年)2月2日最高裁
雑誌『女性自身』2007年2月27日号に掲載された「ピンク・レディーdeダイエット」写真について、無断掲載されたパブリシティ権侵害の損害賠償を求めた
判決要旨
・「パブリシティ権」の定義について『専ら氏名・肖像等、商業的価値に基づく人格権のひとつで、顧客吸引力を排他的に利用する権利』とし、
肖像等を無断で使用する行為において、
パブリシティ権を侵害するものは、
①肖像等それ自体を独立して、鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
②商品等の差別化を図る目的で、肖像等を商品等に付する場合
③肖像等を、商品等の広告として使用する場合
これ3つの場合に不法行為法上、違法となると解するのが相当である。
なお、顧客吸引力を有する者の肖像等の無断使用であっても、肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、正当な表現行為等として受忍されるべき場合もある。
本件では、被上告人が本件各写真を、上告人らに無断で本件雑誌に掲載する行為は、専ら上告人らの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず、不法行為法上違法であるということはできない。
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