◆著作権法学会の2021年度(令和3年5月20日)研究大会(オンライン実施)肖像権・パブリシティ権に参加しての感想を以下に述べる。
・「日本版追及権導入の可能性」小川明子(山口大学教授) (司会)今村哲也(明治大学教授)
長年の第一人者の発表で、大いに感銘を受けた。残念ながら、日本の著作権法への導入は未定だ。しかし、こんなに世界で普及していて画家のモチベーションアップに役立ついい制度が現行法の制定時に話題にならなかったのか。
・「フランスにおける肖像商業利用の法的規律――契約の規律を中心に――」 隈元利佳(関西大学准教授) (司会)上野達弘(早稲田大学教授)
私の娘ほどの年齢と思われる方が報告された。非常に理知的で発生も明瞭で、フランスの肖像権の法的扱いと彼女自身のアプローチ法が明快で、しかもパワーポイントとワードに分けて資料提供するのは、今どきの若い方が大学などのゼミや就活等で鍛えられた結果か。
それにしても懐かしかった。お会いしたとき青年の面影が残っていて、あれから10数年たつのに、名刺交換して以来、ずっと年賀状だけのやり取りをしている上野先生の司会であったが、経年の相貌変化に驚いた。私もそうなんだろうか。自戒したい。
・[シンポジウム]パブリシティ権
司会:井上由里子(一橋大学教授)
・井上由里子(一橋大学教授)「総論」
肖像権についての道しるべを話していただき、はきはきした口調で、とてもいいファシリテーターであった。
・内藤 篤(弁護士)「実務から」
トップバッターは、内藤先生であった。著作権についての書物も出されていて、読んだことがある。また、著作権で有名なF先生から、法廷での内藤先生について聞いたことがあって、そのままの話しぶりであった。話の中に、実際の実務での仕事内容が入ってきてなるほどと思った。
・米村滋人(東京大学教授)「民法から」
お医者さんでもあるのか。全く驚いた。京都にもいるが、法律家(弁護士)で医者。話がやはり、医学的な専門も含まれてきて他では聞けない話を聞けた。肖像権・パブリシティ権には、一元論、二元論の理論構成の違いもあるが、医学的な面を見ると前者でやらないと人格的に想定外の結果になるのではないか。
・奥邨弘司(慶應義塾大学教授)「アメリカ法」
カリフォルニア州とニューヨーク州のプライバシー権が根拠になっている話は面白かった。これはこれで、論拠がはっきりしていて、生前×と死後〇に分けて、立法で解決しているのは、アメリカ的な合理主義か。
・今村哲也(明治大学教授)「イギリス法」
イギリスでは、このような独占的なパブリシティ権は認めていない。2枚目のスライドで「THE END」と出たのには、爆笑した。明治でもこんなに面白い講義をしているか。 受けがいいだろうなあ。パッチワーク的な保護でやる、商標権のパッシングオフなど続きの話が面白かったので、2枚目スライドで終わらなくてよかったよ。
ご自宅からのネット接続であったのか。娘さんの呼びかける子が聞こえた。いいんじゃないか。
・本山雅弘(国士舘大学教授)「ドイツ法」
Marlene Dietrichマリーネ・デートリッヒ判決で司法の流れが変わったことを明確論理で話された。この先生の話は私は、2回目であった。ドイツ法そのものと言った法学理論で、非常に感銘を受けた。譲渡と相続を分けて話されるのも、筋が通っていたが、米山先生の意見も参考に今後の解釈修正の方向性を示されたのは柔軟さをうかがわせる。
・討論 上記登壇者+隈元利佳(関西大学准教授)
会場(ネット)からの質問も踏まえて、一ツ橋講堂では考えられない延長であったが、面白くてもっとやってほしかった。
■著作権の研究も実務もやはり面白いな。もうしばらく、この法分野と関わることになるであろう。
※なお、肖像権・パブリシティ権については、これまでに、民博等で数回講演実績がある。ご希望あればどうぞ。
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