【著作権に関する2006年~2009年の重要判例】

著作権に関する2006年の重要判例】

■ジョン万次郎像の氏名表示権侵害事件 2月27日 知財高裁

幕末から明治にかけて活躍した中濱万次郎(通称ジョン万次郎)の銅像は、昭和43年7月11日に建立され、高知県土佐清水市足摺岬公園内に設置されている。その台座部分等には、制作者として一審被告の通称である「X」と記入されている。彫刻家である一審原告が、著作者人格権(氏名表示権)を有することの確認等を求めた事案である。
判決は「著作権法14条により、…、ジョン万次郎像においては一審被告の…本件各銅像の著作者であるとの推定を受けることになる。…「推定する」というものにすぎず、推定の効果を争う者が反対事実の証明に成功すれば、推定とは逆の認定をして差し支えない…から、一審原告はいわば反対事実の証明に成功した…」

■法律書の著作権侵害事件 3月15日 知財高裁

「総合法令出版」の一般向け法律書シリーズ「通勤大学法律コース」の中の『債権回収』『署名・捺印』『手形・小切手』に自著に似た表現があり、著作権を侵害されたとして、東京第1弁護士会所属の弁護士が出版社や監修者の税理士らに法律書の発行差止めと約800万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、
知財高裁は一審・東京地裁判決を一部変更したものの概ね支持、総合法令出版側に発行の差止めと約26万円の支払いを命じた。
一審判決は「総合法令出版の本はテーマ、構成、章立ての順序ほか、ほぼ同一の文章や図表があり、原告の著書に依拠して執筆されたことは明らかだ」と判断していた。

■写真の著作権「スメルゲット」事件 3月29日 知財高裁

インターネット上のホームページで商品の広告販売を行う会社である株式会社ラフィーネから営業権の譲渡を受けた控訴人が、ラフィーネの著作物である写真及び文章を被控訴人らが無断で利用したことにより著作権侵害が生じ、同侵害により発生した損害賠償請求権(民法709条)を控訴人がラフィーネから譲り受けたなどと主張して、被控訴人らに対し、損害賠償及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
原審が控訴人の請求をすべて棄却する判決をした。
判決は、「静物や風景を撮影した写真でも、その構図、光線、背景等には何らかの独自性が表れることが多く、結果として得られた写真の表現自体に独自性が表れ、創作性の存在を肯定し得る場合がある。…本件各写真は、ホームページで商品を紹介するための手段として撮影されたもの…、被写体の組合せ・配置、構図・カメラアングル、光線・陰影、背景等にそれなりの独自性が表れている…損害賠償として1万円及びこれに対する不法行為の後である平成15年6月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を命ずる限度で理由がある…」

■ パブリシティ権の侵害「モーニング娘」事件 4月26日 東京高裁

通学中の制服姿などを雑誌に無断掲載されたとして「モーニング娘」メンバーら女性タレント15人が、投稿写真誌を出版するコアマガジン社にプライバシー侵害などの理由で賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は10人分、計516万円の賠償を認めた一審・東京地裁判決を変更し、15人分、計896万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
問題となったのは02年6月発売の雑誌「ブブカスペシャル7」。
判決は、一審が認めたプライバシー権に加え、氏名や肖像から生じる経済的利益を独占使用できるパブリシティ権の侵害に対する賠償を新たに認め、賠償の範囲を拡大した。

■著作権譲渡契約における特掲要件の解釈 8月31日 知財高裁

振動制御のソフトウエアプログラム開発業務委託者である機械製造メーカーが新たにシステムを開発・販売した行為が、原システムの開発業務受託者であるソフト開発会社の著作権(翻案権)を侵害したとして、受託者である開発会社が販売差止、損害賠償を求めた控訴審判決で、知財高裁は控訴を棄却した。
プログラムの翻案権の帰属、翻案権は留保されたのか等が争われたが、両者間には著作権の譲渡契約があり、交渉の経緯から委託者による翻案権を前提としていたと解されるとし、ソフト開発会社の請求は退けられた。

■「キャロル」コンサートのDVD化事件 知財高裁 9月13日

矢沢栄吉さんらが所属したバンド「キャロル」の解散ライブを撮影したビデオとDVDを巡り、映像制作会社(東京都渋谷区)が、大手レコード会社(東京都港区)に製造販売の中止などを求めた控訴審で、知財高裁は、一審判決を取り消し、原告敗訴の逆転判決を言い渡した。
知財高裁は、制作会社は著作権者であったが、「撮影代金の支払を受けてマスターテープを渡し、権利を譲渡した」と認定し、販売差止と映像会社への約4900万円の支払いを命じた一審判決を取り消した。
また、宣伝用DVDについては、大手レコード会社が無断改変をしたとして、一審と同じく配布差止と賠償金の支払いを命じた。

■二次的著作物の成否『図説江戸考古学研究辞典』9月26日  知財高裁

江戸風俗画家が、柏書房が発行した『図説江戸考古学研究辞典』は、画家の模写による絵画の著作権を侵害したとして、同書籍の販売の停止と損害賠償を求めた一審判決を不服とし控訴していた。
知財高裁は、模写絵の著作物性を「その成果物が著作物であるかどうかは、制作結果ではなく、その制作過程において、制作者自身の『精神的創作』行為が発揮されたかどうかで判断」すべきであるとし、控訴棄却、損害賠償金を減額した。

■講習会資料の職務著作事件 10月19日 知財高裁

高砂熱学工業株式会社の従業員だった控訴人が、会社在職中に平成12年度講習会の講師を努めるために執筆した講習資料は職務著作物ではなく自身の著作物であり、著作権は自分にあるにも拘わらず、次年度以降の講習会に複製して他の従業員等を使って講習会を行い、著作権及び著作者人格権を侵害されたとして、資料の廃棄、損害賠償、不当利得返還請求などを起したが、一審判決で請求を棄却されたので、控訴していた。
知財高裁は、資料の著作者は控訴人であるが、その後の経緯を見るに、12年度以降の講習会資料の作成に当って変更、追加、切除して複製することを黙示的に許諾していたとして、控訴を棄却した。

■国語ドリル教材無断使用事件 12月6日 知財高裁

小学生用国語教科書に掲載された作品の著作権者である詩人、作家、児童文学者、学者、翻訳家ら計23人が、「作品を国語のテストに無断で使われ、著作権を侵害された」として、教材出版社6社に損害賠償を求めた訴訟で、請求の一部のみを認めた東京地裁判決を不服として、控訴していた。
知財高裁は、請求の多くについて時効の成立を認め、損害賠償の増額を求める追加請求について時機に後れた攻撃防御方法であるなどとした原審を維持し、控訴棄却を言い渡した。

■宇宙開発事業団のプログラム職務著作事件 12月26日  知財高裁

宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)の職員が、ロケットや人工衛星の制御データ解析プログラムについて著作権、著作者人格権が自分にあることの確認を求めた訴訟で、東京地裁が下した請求棄却の判決を不服として控訴していた。
知財高裁は、「プログラムに著作物性があるといえるためには、指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラム全体に選択の幅が十分にあり」「それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れているものであること」を要し、「プログラムの表現に選択の余地がないか、選択の幅が著しく狭い場合には、作成者の個性表現の余地もなくなり、著作物性を有しないことになる」として、プログラムの創作者が誰であるかを検討した。その上で、『「職務上作成する著作物」の要件については、業務に従事する者に直接命令されたもののほかに、業務に従事する者の職務上、プログラムを作ることが予定または予期される行為も含まれる』として、著作物と認定したプログラムは法人著作物であるとし、控訴を棄却した。

■パチンコ「大ヤマト」事件 12月27日 東京地裁

東北新社は、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の映画の著作権を、製作総監督であったプロデューサーから譲渡された著作権所有者であるとし、「似た戦艦や人物の映像が使われて、著作権を侵害された」として、パチンコメーカーなど4社に、アニメ「大ヤマト」関連製品の製造・販売の差止め、損害賠償を求めて提訴していた。
しかし、東京地裁は、経緯や契約から判断して、映画の著作権者は、プロデューサー個人ではなくプロデューサーの属する法人であると判断し、プロデューサー個人からの譲渡契約によった東北新社は著作権者ではなく、たとえ著作権者であったとしても、譲渡契約には翻訳権・翻案権譲渡が特掲されていないので翻案権の侵害にもあたらないとした。
また、「宇宙戦艦ヤマト」と「大ヤマト」の映像を比較し、本件映画の製作以前から戦艦が宇宙を飛ぶモチーフが作品化されていたとして、「特に目新しい表現ということはできない」と指摘して、東北新社の請求を棄却した。

 

【著作権に関する2007年の重要判例】

■引用…「聖教グラフ」掲載写真のHP無断使用事件 4月12日 東京地裁

被告が、創価学会池田名誉会長の写真を、他のインターネットのホームページからコピーして自らのホームページに掲載した行為が、写真の複製権侵害、公衆送信権侵害、同一性保持権侵害にあたるとして、創価学会は、損害賠償金などを求めて訴訟を提起していた。
東京地裁は、肖像写真について、背景、構図、照明など工夫を加えて撮影しているので著作物性があるとし、やや不鮮明な態様で再生されているが複製物であるとした。
また、他のホームページ上の改変された写真をコピーした行為が同一性保持権の侵害にあたるかについては、「著作物を一部改変されて作成された同一性保持権を侵害する複製物をそのまま複製し、自らのホームページに掲載する行為も、著作物の改変行為」であり、同一性保持権を侵害するなどとして、損害賠償金など40万円の支払いを命じた。

■4月27日 譲渡契約の解釈「ヒートウェイヴ」事件 東京地裁

実演家の送信可能化権が施行される以前に、ロックグループ「ヒートウェイヴ」がした実演の送信可能化権は実演家に帰属することの確認を求めたのに対し、レコード会社(SME)は、実演家の著作隣接権は自分たちに譲渡継承されたとして、反訴した。

東京地裁は、ヒートウェイヴとSMEの専属契約は、原盤にかかわる「一切の権利(著作隣接権も含む)」はSMEに帰属するとしており、送信可能化権を含む「一切の権利」は、平成10年1月1日に著作権法92条の2が施行された時点で、「原告らが原始的に取得すると同時にSMEに譲渡・継承された」として、本訴請求を棄却し、反訴請求を認容した

■ストレージサービス「MYUTA」事件 5月25日 東京地裁

情報サービス業「イメージシティ」は、ユーザーが好みのCDなどの楽曲を自分のパソコンに取り込んで同社のサーバーに保存し、いつでも自分の携帯電話にダウンロードして聞けるサービス「MYUTA」を始めた。
これに対し、JASRACは「MYUTA」で行われる複製行為は音楽著作権の侵害に当たるとして、サービスの停止を要求した。
イメージシティは、「銀行が貸金庫を提供しているのと同じ」であると主張し、複製行為の主体はあくまでユーザー自身であり、蔵置した音源データには当該ユーザーしかアクセスできないので、1対1の対応関係しかなく公衆送信には当たらないとして、「JASRACに著作権侵害差止請求権がないことの確認」を求めて提訴した。
判決は、「本件サービスのいわば入口と出口だけを捉えれば、ユーザーのパソコンとユーザーの携帯電話という1対1の対応関係といえなくもないが」、このサービスは、携帯電話にダウンロードが可能な形に音源データを複製する行為によってはじめて可能になり、この複製行為そのものは同社の管理下で行われていること、音源データの携帯電話への送信行為が不可避であるが、「ユーザーは、本件サーバーにどの楽曲をダウンロードするか等の操作の端緒となる関与」をするが、送信行為は同社の管理下にあるサーバーで行われ、送信行為の主体はイメージシティ社である、等として同社の請求を棄却した。

■選撮見録事件 6月14日  大阪高裁

テレビ番組を録画し、マンション内の世帯が好きな時間に番組の配信を受けられる装置「選撮見録」の販売は著作権、著作隣接権の侵害だとして、大阪の民放5社が装置使用と販売の禁止、廃棄を求めた控訴審の判決が大阪高裁であった。
大阪高裁は、各居室の入居者が複製行為、公衆送信、送信可能化行為の主体であるが、同一ファイルが他の入居者によって利用されるのであるから私的使用に当たらず複製権を侵害するとした。また、複製行為、公衆送信、送信可能化行為の主体は現実にコントローラーを操作する各室の入居者であるとしても、「その過程を管理・支配し、かつ、これによって利益を受けている等の場合には、その者も・・・複製行為、公衆送信・送信可能化行為の主体と評価し得るものと解される」等として、2府4県について本件商品の販売を禁止し、集合住宅入居者に放送番組を録音・録画をさせてはならないとした。さらに、被控訴人の反訴請求をいずれも却下した。

■最高裁12月18日 「シェーン」格安DVD事件

1953年公開の米映画「シェーン」の著作権者であるパラマウントとDVD製造販売会社の東北新社が、格安DVDを製造販売する会社などを相手取って販売差止や損害賠償を求めた訴訟の上告審判決があった。
最高裁第三小法廷は、経過規定にいう「施行の際現に」という文言の一般的用法においては、当該法律の施行日を指すものと解するほかないとして、「シェーン」を含め、昭和28年に団体名義で公表された「映画の著作物」の著作権は平成15年12月31日をもって存続期間が終了するとして、上告を棄却した。

 

【著作権に関する2008年の重要判例】

■プロ野球選手の肖像権侵害事件 2月25日 知財高裁

選手名や肖像を第三者に使用許諾する権限が球団側にないことの確認を求めた一審の判決を不服として、プロ野球選手団が控訴していた。
知財高裁は、一審判決を支持し、野球協約に基づく統一契約書では「肖像権のすべてが球団に属し、球団は宣伝目的のためにいかなる方法でも利用できる」等と規定しており、この規定自体が公序良俗に反するとはいえない等として、請求を棄却した。

■雑誌記事の社保庁内LAN無断掲載事件 2月26日東京地裁

官僚問題などを取り上げてきたジャーナリスト(原告)が、週刊誌に掲載した年金問題の記事が社会保険庁の電子掲示板システムの中にある新聞報道等掲示板にそのまま掲載されて、社会保険庁、社保庁業務センター、全国の地方保険事務局・事務所等々で閲覧可能にされたことによって、複製権または公衆送信権を侵害されたとして、著作物のLANシステムからの削除や損害賠償等を求めて国を提訴した。
社会保険庁は、国民の苦情の多くは報道等を契機とするものであり、その苦情に適切で統一的な対応をするためには極力速やかに報道等の内容を把握する必要があり、したがって、この複製行為は、著作権法42条1項本文の「行政目的のための内部資料として必要と認められる場合」に相当する等と主張した。
東京地裁は、週刊誌記事をLANシステムに記録した行為は、自動公衆送信を可能化したもので公衆送信権を侵害する、42条1項は特定の場合に著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを規定したものであり、公衆送信権侵害には適用されないことは明白だとして退け、損害額は114条3項を適用して算定した。

■ロゴ登録とケネス・ハワード著作物の二重譲渡事件 3月27日 知財高裁

ケネス・ハワードの著作権は、共同相続した2人の子供A及びBから、上野商会へ著作権譲渡(本件譲渡契約1)され、上野商会からさらに「フォン・ダッチ・オリジナルズ」(控訴人)へ譲渡(本件譲渡契約2)された。
ところが、A及びBからさらに被控訴人へ著作権譲渡(本件譲渡契約3)されたために、ケネス・ハワードの著作権をめぐっては二重譲渡の関係が成立した。
一審の東京地裁判決は、日本の著作権法77条により、著作権の移転については登録しなければ第三者に対抗できないとして、譲渡登録を完了した被控訴人を著作権者として、控訴人の請求をすべて棄却した。これを不服として控訴したものである。
これに対し知財高裁は、本件譲渡契約1及び2は有効に締結されており、本件著作権はA及びBから上野商会を経て控訴人に移転している。A及びBから被控訴人への「本件譲渡契約3は成立していないかまたは虚偽表示により無効であって、本件著作権は譲渡されておらず」、 被控訴人は背信的悪意者と認められるから、控訴人に対して著作権法77条の対抗要件の欠缺(けんけつ)を主張できない等として、控訴人を著作権者と認定し、被控訴人に譲渡登録の抹消手続きを命じた。

■ 博士イラスト事件 7月4日 東京地裁

原告は、幼児向け教育用ビデオやDVD商品を製造、販売しているが、被告が販売するDVD商品中の博士の絵柄が、原告の博士の絵柄と酷似しており、著作権を侵害された等として、損害賠償などを求めて提訴した。
東京地裁は、原告の博士の絵柄は著作物として創作的な表現であると認定した。しかし、両者を比較すると、被告の博士絵柄は3DのCGにより作製され、立体的質感があり、原告博士絵柄は「平板な感じで全体的にのっぺりとして」いて、絵柄として酷似しているとは言えないとした。
また、両者の共通点として挙げられている「角帽をかぶってガウンをまとわせる」等はアイディアであり、その他の共通点も表現はありふれた表現であって、創作性が認められない等として、原告画像の複製権、翻案権を侵害しない等とした。

■ライブドア裁判傍聴記事件 7月17日 知財高裁

ライブドア事件の証人尋問の傍聴記を自身のブログに公開した傍聴記事を、ヤフー(被告)が運営する「Yahoo!ブログ」に原告に無断で掲載され、著作権を侵害され、プロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報開示を求め、記事の削除を求めて提訴したが、一審では、原告傍聴記は「著作物」に該当しないとして請求を棄却されたため、原告が控訴していた。
知財高裁は、原告傍聴記の著作物性について、「原告傍聴記における証言内容を記述した部分は、証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおり記述したか、又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであるから、原告の個性が表れている部分はなく、創作性は認めることはできない」等として、原判決は相当であり、控訴を棄却するとした。

■デザフィナード事件 9月17日 大阪高裁

和歌山市内のレストランが、日本音楽著作権協会(JASRAC)の管理する楽曲をピアノ演奏やライブ演奏をして著作権を侵害したとして、JASRACは、管理楽曲の使用差止め、楽器類の搬入禁止、損害賠償等を請求した。一審の大阪地裁はJASRACの請求の一部を認容したので、双方が控訴した。
大阪高裁は、『一審被告は、本店店舗におけるピアノリクエスト、ピアノ弾き語り、ピアノBGMにおける演奏、一審被告主催の入場料を徴収する「ライブ」演奏において、JASRACの管理著作物を使用して著作権侵害を継続している』、ただし、第三者主催のライブ演奏および貸切営業においては著作権を侵害したとはいうことができない等として、原判決の一部を変更した。

■“土地宝典”の違法コピー事件 9月30日 知財高裁

富士不動産鑑定事務所等の一審原告は、法務局が「土地宝典」を不特定多数の第三者に貸出して、各法務局内に設置したコピー機により利用者による無断複製を放置した行為は、被告自身による複製権侵害行為か、侵害行為の教唆ないし幇助であり、不当利得にもあたるとして、損害賠償の支払いと不当利得の返還を求めた。原判決は、訴外財団法人民事法務協会とともに、国の共同侵害主体を認定し、不当利得を使用料相当額と認定した。
国は、敗訴部分を不服として控訴を提起した。
知財高裁は、国は「土地宝典」の「貸出しを受けた第三者が違法な複製行為をしないよう注意を喚起するなどの適宜の措置を講じたと評価できるような具体的な事実もなく、漫然と本件土地宝典を貸し出し、不特定多数の者の複製行為を継続させたといえる」とし、無断複製行為を幇助した点について、少なくとも過失があるとして共同不法行為責任を免れないとした。
しかし、不当利得については、複製行為は国自らが行ったものではなく、民事法務協会から得ているコインコピー機の設置使用料は、国有財産の一部を占有させたことによる対価の性質を有するもので、民事法務協会が受けるコピー代金に関連して得たものではない等として、原判決の一部を変更した。

■北朝鮮映画のニュース報道事件 12月24日 知財高裁

「朝鮮映画輸出入社」と「カナリオ企画」が、日本テレビが平成16年6月30日のニュース番組で北朝鮮映画を無許諾で放送したとした訴訟の控訴審である。
知財高裁は、北朝鮮のベルヌ条約加盟と国家承認とは別個の問題であり、未承認国に対して、国際法上の主体である国家間の権利義務関係は認められないとする原判決の判断は相当であったとして、控訴を棄却した。
しかし、本件映画を営利目的で無許諾放映をしたことは社会的相当性を欠き、控訴人カナリオ企画の利益を違法に侵害する行為であり、著作権法の保護がなくても、民法709条の保護を得る利益があるとして、予備的請求の一部を認容した。ただし、許諾料相当額の損害賠償の主張に対し、“著作権のある著作物と同様の損害を認めることは相当ではない”として、民事訴訟法248条を適用、損害額を10万円、弁護士費用を2万円と認定した。

 

【著作権に関する2009年の重要判例の一部】

■ロクラクⅡ事件 1月27日 知財高裁

「ロクラクⅡ」と呼ばれる2台の機器を利用者に貸与し、1台を日本国内に録画・送信機器、もう一方を海外に受信機器として置いてインターネットで結び、日本のTV番組を海外で視聴できるサービスの運営会社「日本デジタル家電」(浜松市)のサービスは、TV局が持つ著作権を侵害していると、NHKと民放9社が提訴した事件で、一審の東京地裁判決で敗訴したサービス運営会社がこれを不服として控訴したものである。
一審は、「親機ロクラクの設置場所を提供して管理支配することで、国外の利用者が格段に利用しやすい仕組みを構築し、いまだ、大多数の利用者の利用に係る親機ロクラクを、東京都内や静岡県内において管理支配しているものということができる」として、私的使用に当たらず、運営会社は、TV番組の複製行為を行っており、複製権、著作隣接権としての複製権を侵害しているとした。
知財高裁は、「利用者が親子ロクラクを設置・管理し、番組を受信・録画し、これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為」であり、運営会社のサービスは「利用者の自由な意志に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境、条件を提供しているにすぎない」として、録画・送信サービスの差止めと損害賠償を命じた一審判決の、サービス会社の敗訴部分を取り消し、TV局側の付帯控訴請求を棄却した。

■チャップリン映画の格安DVD事件 10月8日 最高裁

チャールズ・チャップリンの「黄金狂時代」などの劇場用映画9作品の著作権を管理しているヨーロッパの会社(原告)が、管理会社に無断で同映画をDVDに複製し、頒布していた東京の制作会社(被告)に対し、DVD商品の複製、頒布の差止め、その在庫品、デジタルリニアテープの廃棄、損害賠償を求めた事案で、最高裁は被告の上告を棄却し、一、二審の判決が確定した。
最高裁判決は、“原審による確定した事実関係によれば、本件各映画の全体的形成に創造的に寄与したのはチャップリン以外になく、チャップリンが著作者である”として、「著作者が自然人である著作物の旧法による著作権の存続期間については、当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され、当該著作物が公表された場合には、それにより当該著作者の死亡時点を把握することができる以上、仮に団体著作名義の表示があったとしても、旧法6条ではなく旧法3条が適用され」るとした。
なお、映画「シェーン」に関する最高裁判決は、「旧法6条の適用がある著作物であることを前提とし判示したものにすぎない」として、本件にその論旨を採用することはできないとした。

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